2010年9月 アメリカのお金持ち

アメリカには個人でアート財団を作ったり、美術館を建てたりするお金持ちの人々がいます。もちろんそれは税制の違いや、美術を支援することがステータスにもイメージアップにも大きく繋がるからという他の理由もたくさんあるにはあるのですが。でも自分のコレクションを作り上げるならやはり評価されるコレクションにしたい、素晴らしいコレクションにしたいと思うのが人間の性でしょうか、そういう大きな規模でコレクションをするコレクターと呼ばれる人達は自分で収集する作品を決めず、その道のプロフェッショナルに収集を依頼することもあります。

それでも本当にアートを好きでアートを理解し愛しているコレクターだってたくさん存在します。
私が良いところだと耳にしながらずっと行く機会がなかった”The Frick Collection”(フリックコレクション)もHenry Clay Frick(ヘンリー・クレイ・フリック)氏が実際に亡くなる前の5年間住んでいた邸宅を美術館として一般に公開している所です。彼は奥さんが亡くなった後は美術館として一般に公開することを遺言として残したそうです。そして彼の死後に敷地の中の一部を改装することで邸宅を大きく広げ、美術館として建物は生まれ変わりました。
たくさんの作品が展示されているのですが、ほとんどの作品はフリック氏が生前に住んでいた時に展示されていたままの状態で現在も展示されており、美術館と呼べるだけの素晴らしい質の高いコレクションでありながらも他の美術館にはないどこか落ち着いた優雅な時間がそこには流れているような感じがします。
実はここにはフェルメールの作品が3点も展示されているのです。しかもフリック氏の遺言で美術館等への貸し出しは禁止されており、ここでしかその3点は見ることができません。ということは作品数の少ないフェルメールの約1/10作品を見ることができるのです。フェルメール以外にも誰でも名前くらいは聞いたことがあるような作家の作品が展示されています。
私は主に写真を使って作品を作っているため、西洋絵画や彫刻などには特別な興味が以前はあまりなかったのですが、ニューヨークで暮らし目にするうちに興味を持つようになってきました。やはり良いものをたくさん目にしていくとその見る目もかわっていくのでしょうか。それまではフリックコレクションは絵画が多いと聞いていて調べることもせず、行ったことがありませんでしたが、実際には彫刻や調度品、家具などもたくさん見ることができるし、無料の日本語音声ガイドもかりることができるのでコレクションと素敵な邸宅を満喫することができます。
彼は若くしてコークス王と呼ばれて、後に鉄鋼王のカーネギー氏の共同経営者となりました。そして住んでいたピッツバーグは煙が作品に悪いからとニューヨークに移り住んだそうです。彼は特に熱心に作品を集めたりしていたわけでもないようですが、作品をみせるための部屋も邸宅の中にあり、そこを夜に一人で歩いては作品を眺めていたそうです。
長い時間が経っても愛される作品は幸せですね。

(text・photo/澤田知子)

澤田 知子
フォトアーティスト、成安造形大学2000年卒。
現在、文化庁在外研修員としてニューヨーク在住。
第29回木村伊兵衛賞受賞。
セルフポートレートの手法で「内面と外見の関係」をテーマに作品を制作し、国内外で発表している。

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