2010年8月 創造の壁

私がアーティストになりたい!と思ったのは高校2年生の時。当時の美術の先生は有名な現代美術作家でした。先生の楽しげな様子を見て、私も作品を作って生活する人になりたい!と思い、その先生との出会いがアーティストをめざすことになったきっかけでもありました。そしてその先生に勧められるままに成安に入り、次は写真に出会い、様々な先生や先輩に出会い、学校に来て下さる多くのゲストの先生に出会いと幸運な出会いを重ね今日の私があります。

その幸運な出会いの中に私が出会った時には既にこの世にはいない人がいました。彼とは高校の図書室で出会いました。高校は普通科しかなかったものの、前記の美術の先生のおかげでファッションを含むたくさんの美術関係の良書が置かれて充実していました。

その頃の私は作品を作りたいとは思ってもどう作って良いのか分からず、そして何を使って表現すれば良いのかもまだ分からずで、インクを使って想像のまま、手の動くままに絵を書いていました。絵を描きはじめるとそれは、それは楽しくて毎日のように時間を忘れて書いていたのを覚えています。

しかしある日突然もう描きたいものがないかもしれない…もう楽しくない…イメージが思い浮かばない…とあっという間にえらく早い産みの苦しみ!?が訪れたのです。もうこの日からは机に向かっても手は動きません。でも気持ちは作りたいのです。表現したいのです。私の創造力はたったこんなものかとあきらめてみたり、違う表現方法を学べばまた何か思い浮かぶはずと思い直してみたり。でも気持ちはモヤモヤすっきりしません。だって本当は作りたいのにアイデアが浮かばないから自分の気持ちを見ないように、気付かないようにしていただけなのですから当然です。

そんなある日、何かがふと閃いて図書室へ行きそこで私は彼に出会いました。彼はたくさんの作品をこの世に残し、世界中の美術館で今でも個展がひらかれる有名作家です。美術に興味がない人でも彼の名前や作品を一度は目にしたことがあるはず。彼の作品集は私をとりこにし、彼は私にとても大事なことを教えてくれました。

それ以来、彼は私の恩人であり恩師の一人となり「創造の壁を造っていたのは私自身」ということをいつも思いださせてくれます。思えばアイデアに困ったことはないものの、やはり私も悩むことは多々あります。でもそれを色々な出会いに助けられ、様々なやり方で乗り越えてきたんだな〜と彼の作品を目の前にして改めて思い返し、これからもがんばろうという気持ちにさせられた今日この頃です。

(text・photo/澤田知子)

澤田 知子
フォトアーティスト、成安造形大学2000年卒。
現在、文化庁在外研修員としてニューヨーク在住。
第29回木村伊兵衛賞受賞。
セルフポートレートの手法で「内面と外見の関係」をテーマに作品を制作し、国内外で発表している。

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