2010年4月 行列のできる展覧会

私の印象では、ニューヨークの人達は並ぶのがあまり好きではありません。もちろんニューヨーカーに限らず長い間並ぶことを好む人はあまりいないでしょうけど。

でも例えば日本で銀行や郵便局で順番を待っているとき、5、6人の列で文句を言っている人を私は見たことがありません。

ある時、NYの銀行の窓口で私は順番を待っていました。この銀行だけではありませんが、こちらでは窓口がたくさんあるにもかかわらずその窓口全部があいている、なんてことは稀な街です。その時はたしか銀行の6つの窓口のうち4つも窓口が開いていて、待っている人も5、6人でした。どちらかと言えばラッキー。それなのに一人の女性がなぜ他にも人がいるのに窓口を追加で開けないのかと大きな声で文句を言い始め、銀行員の男性がすぐにかけつけ丁寧に用件を聞き、それなら機械でもできるからお手伝いするのであちらの機械でご一緒にいかがですか?と申し出たのに、機械でやるのは嫌だと言い、その次はスペイン語しか話せない人が窓口で困っているのを見て、この銀行にはスペイン語が話せる人もいないの!?と大きな声で文句を言うという状況に出くわしました。結局、彼女は自分の番がきたら静かになりさっさと用を済ませて何事もなかったかのような顔をしてさっさと銀行を後にしました。

日本のように銀行や郵便局に信用がないので、銀行では念のため窓口を使う人が多いのもたしか、そしてスペイン語を話す人がとても多いのもたしか、です。ニューヨークには短気な人、文句を言ったもの勝ちと思っている人が多い、ということを象徴するような出来事でした。

2010-04

そのニューヨーカー達が連日に渡って整理券を求め行列ができていたのが、ニューヨーク近代美術館(MOMA)で去年の11月から開催されているTim Burto展です。Tim Burtonならふだん美術にあまり関心のない人でも名前を耳にしたことがあるかもしれません。もしくは映画「シザーハンズ」「The Nightmare before Christmas」等の監督と言えば知っている人も多いかもしれません。

私は去年12月に友人達と一緒にこの展覧会を見に出かけたものの観光シーズンということもあり、あまりの人の多さに私はこの時あまり丁寧に見ることをせず、また戻ってきてゆっくり見ようと心の中で思っていました。

しかし1月になると行列ができはじめ、人数制限までされる始末。整理券は連日お昼頃にはなくなってしまうというほどの人気で、なかなかもう一度見る機会を得ることができずにいましたが、あまりの人気に展示が終る前には特別に夜遅くまでこの展示だけを見られる日や、メンバーオンリービューの日が何日か設けられ、やっとゆっくり見ることができました。

行列ができた理由の一つはきっと子供も大人も楽しめる展示だったこと。家族用のパンフレットも配られていました。たくさんの家族連れを目にしましたし、この展示が始まってからは他の展示室にもいつもより多くの家族連れがいたように思います。日本でも家族で美術館に行く、そんな家族が増えることを願います。

(text・photo/澤田知子)

澤田 知子
フォトアーティスト、成安造形大学2000年卒。
現在、文化庁在外研修員としてニューヨーク在住。
第29回木村伊兵衛賞受賞。
セルフポートレートの手法で「内面と外見の関係」をテーマに作品を制作し、国内外で発表している。

  • seian
  • このページのトップへ △