2009年12月 人だかりのニューヨーク

ニューヨークにはいつも観光客が溢れていますが、12月のニューヨークの観光地は黒山の人だかり、と言っても良いほど観光客や訪れる人が多いように感じます。春暖かくなってから夏にかけても人は多いのですが、12月のニューヨークは11月の感謝祭の翌日の大セールからはじまるクリスマスまでのセールを狙ってか、もしくはキラキラのクリスマスデコレーションを見る為か、特にショッピング街はすごい人だかりで、住んでいる人はあまりそういう場所に近寄りたがらないくらいです。
その人の多さを感じるのがショッピング街ともう1つ。もはや観光地化している美術館です。こちらの美術館では展示期間がたいてい2ヶ月から長い時には半年ほど展示されるので、1度見た展示でももう1度訪れてみたり、今日はこの企画展、次の機会に別のフロアの企画展、等とゆっくりしたペースで見ることが出来るし、平日の昼間に行けば自分のペースで好きなように見ることもできます。しかしそれができないのが12月。できないわけではありませんが、どうもそういう気分にはなれません。いまニューヨークにある主要美術館ではどこも注目の展覧会や人気の展覧会をやっています。12月に美術館を訪れた私はもっと早くに見ておくべきだったと少々後悔したほどです。
日本で美術館に行列ができるといえば、欧米の有名な美術館の作品がやってきたときや、教科書にも掲載されているような有名な画家の展覧会に限定されているように思います。しかし、日本では一般的に知られていなくとも世界中で活躍している日本のアーティストはたくさんいるものです。それなのに、そういうアーティストが展覧会を日本で開催しても行列ができたという話は残念ながら耳にしたことはありません。
ニューヨークの美術館のみならず、海外で美術館に足を運ぶと、その国出身のアーティストをとても大切にしているのだなと感じることもよくありますし欧米のアーティストと話をするとアーティストをとりまく社会環境が全く違うことに驚くことも、うらやましいことも多々あります。
今まで美術館が観光地化しているところをいくつかの国で目にしてきました。でも残念ながら日本ではまだ美術館が観光地化されるほどには至ってないように思うし、そんなことには気がついてもいない、という印象さえ受けます。
私が学生だった頃、どうしてたくさんのアーティストが海外にでていってしまうのだろうと思ったものですが、今ではその理由も分かる気がします。ただ自分自身がこれからもずっとニューヨークにいたいかというと、日本を離れたからこそ以前より日本に愛着を感じるようになり、日本人のすばらしいところを新たに見つけたりすることもでき、私はその時その時で必要に応じ色々な場所に移動できれば良いなあ、と呑気に考えています。観光地化された美術館が近距離でいくつか存在しているというニューヨークはやっぱりアーティストにとってもどこか特別な、まるで「ニューヨーク」という1つの国のような感じがします。そんな魅力的なニューヨークですから、黒山の人だかりができてしまうのは当然かもしれません。

(text・photo/澤田知子)

澤田 知子
フォトアーティスト、成安造形大学2000年卒。
現在、文化庁在外研修員としてニューヨーク在住。
第29回木村伊兵衛賞受賞。
セルフポートレートの手法で「内面と外見の関係」をテーマに作品を制作し、国内外で発表している。

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