2009年11月 時代を担う写真家

早いものでもう2009年も終盤にさしかかっていますね。ニューヨークは感謝祭にむけて慌ただしい雰囲気が漂っています。感謝祭の日は実家に帰り家族があつまって食事をしたり話をしたりと、日本で言うお正月のような印象を受けます。
展覧会も秋にはじまった展示が1月あたりまで続くので今はどこも一押し?の展示が多いかと思うのですがMOMAでは新しく時代を担っていく写真表現の紹介として、1985年から毎年秋に2人から4人のこれからの時代に重要とされる作家を選出し、現在まで15カ国、約70人近くのアーティスト達が選ばれてきました。出品作家はWalead Beshty, Daniel Gordon, Leslie Hewitt, Carter Mull, Sterling Ruby, and Sara VanDerBeekの6人で、1972年から1980年生まれの若手作家です。偶然にも私は1977年生まれ。出品作家の世代という訳です。
私自身には時代を担っていく世代に自分がいるという意識はなかったので、この展示を見に行った時には多少の驚きがありました。それとともに自分がそういう世代になったということに喜びも感じました。ニューヨークにいるとアーティストの人数の多さを感じることはよくありますが、逆に言えば、その中で表現を継続していくこと、発表を継続していくこと、していけることというのは奇跡的ではないかと思うのです。だから成安造形大学に在学中から作家活動を続けてきて、今時代を担っていく写真家として選ばれている作家達と自分自身が同じ世代であるということを光栄に思い、嬉しく感じます。
ニューヨークにはアジアやヨーロッパ、そして同じアメリカの西海岸からもアーティストやキュレーターなど様々な美術関係者がやってきます。先日は韓国から友人の写真家がパフォーマンスとアーティストトークの為にニューヨークを訪れていました。彼とは3年前にニューヨークのレジデンスプログラムで一緒になり、彼が日本語を話せたこと、知り合う以前に同じ展覧会に出品したことが何度かあったことからすぐに仲良くなりました。そして他の日本人の画家の友達と台湾人の映像作家の友達の4人で同じアジア人同士、口に合うものが似ていてレジデンスで皆が集まった時には度々アジア料理を食べに行った思い出があります。このレジデンスプログラムで同じ時期に滞在していた作家に今でも偶然ギャラリーであったりすることがあります。日本にいるとアーティストは移動が多いという印象をそんなに受けないのですが、こちらにいるとアーティストは色々なところに移動して制作して発表してということを続けている人も多いのだということを実感します。偶然ギャラリーで会いニューヨークに住んでいるのかと聞くとそうではない場合も多いのです。ということは、ニューヨークを頻繁に訪れる人がいかに多いのかということだとも言えます。
その韓国人の友人もいつもたいてい1週間仕事をして帰国していきますが、自分がニューヨークにいて世界中にちらばっている友達に会い意見交換をして、世界の美術業界の話をするのはとても楽しい時間でもあります。彼は私よりもほんの少し上の世代ではありますが、彼も時代を担っていく作家の一人ではないかと彼を支えているまわりの人達をみていると確信します。成功している作家はいつもまわりに頼れるサポートが、素晴らしい友人達が存在しているように思います。
たくさんの人が助け合って、美術に興味を持っているからニューヨークにはたくさんの人が集まってくるのかもしれません。作家がいて支える人がいる。作る人がいて、観る人がいる。片方だけでは成立しません。時代を担う写真表現は写真家の手によって生み出されていくだけで、その表現の根本は時代そのものにあり選ばれた人だけが担っていくものではないのだと私は思います。

(text・photo/澤田知子)

澤田 知子
フォトアーティスト、成安造形大学2000年卒。
現在、文化庁在外研修員としてニューヨーク在住。
第29回木村伊兵衛賞受賞。
セルフポートレートの手法で「内面と外見の関係」をテーマに作品を制作し、国内外で発表している。

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