2009年6月 展覧会を見に行こう

今メトロポリタン美術館では「The Pictures Generation」という展覧会が行われています。メジャーなNYの美術館では初めて70年代80年代にNYで活動していた写真世代のアーティストに焦点をあてたグループ展だそうです。
しかし、写真世代とはいえ展示されている作品は映像作品、絵画からインスタレーションまでその幅は写真だけにとどまらず、Richard Prince、Robert Longo、Cindy Sherman、Barbara Krugerなどの作家で展覧会は構成されています。私自身が学生時代に学んだ作家がたくさん。まるで体験版の教科書のようです。展覧会ではベトナム戦争や政治に希望を持てないといった時代の中でアイデンティティの模索、時代への反発、新しい表現の模索といった作家のエネルギーを感じることができます。
私は自身の作品がセルフポートレート(自画像)作品なので、学生の頃には同じくセルフポートレートで作品を展開しているCindy Shermanの作品について授業の中で研究したこともありました。6月8日に終了したMOMA(The Museum of Modern Art)での「Into the Sunset: Photography’s Image of the American West」展でもいくつかのCindy Shermanの作品が展示されていました。日本にいる時は本以外では彼女の作品を目にすることはほとんどなかったのですが、今ではこうやって美術館や時には画廊で彼女の生のプリントに出会うことが度々あります。生でみると本では見えなかった細かい部分、そしてその大きさが持つ存在感など、時にはまるで初めてそのイメージと出会ったような新鮮さがあります。
日本の美術館が混む時というのは、例えばルーブル美術館の作品が巡回してきたとか、ピカソやセザンヌ等の教科書にも掲載されているような作家の展覧会等かと思います。もちろんNYでも同じように有名な作家の展覧会となれば通常よりも人は増えます。先日チェルシーにあるガゴシアンギャラリーではピカソ展に1ブロックの列ができ入場制限がされていました。すばらしい展覧会だという噂を耳にしており早く行きたいと思いながらも、最終日になってしまい、30分待ちでやっとギャラリーに入ることが出来ました。作品は今までにも色々な所でピカソを見ている私にとっても初めて見るものが多くすばらしい展示。噂になるのも行列にも納得の展覧会でした。
観光客も多いNYではいつ行っても主な美術館は多くの人で溢れています。有名な作品の前で記念写真を撮影、スケッチをしている人もいれば、家族で何やらお互いに感想を言い合っている人達もいます。うるさくはないですが、日本の美術館のように音をたててはいけないような静けさはあまりありません。それぞれの人が自由に美術を体験しています。観客は作家と同じように大切な存在です。作家が作品を作りそれを体験する観客がいて、作品を展示してくれる美術館と画廊があり作家は展示ができ、観客は体験することができ、観客が訪れてくれるから画廊と美術館がその役目を果たすことができ・・・全ては繋がっていて同じように大切な存在です。
本で見てもイメージを知ることはできます。本でしか読めない情報もあるかと思います。でもやはり生の作品をみると本では受けとれない作家のエネルギーを感じることが出来るし、実際の作品が持つ存在感を感じられると私は思っています。梅雨時期は美術館でゆっくり作品と対面してみてはどうでしょう?感想はなんでも良いのです。言葉にならないかもしれません。でも作品と対面しエネルギーを感じるだけでも作品との対話はできるのではないでしょうか?日本にいる時に「私は美術が分からないから」という人にたまに出会うことがありましたが、美術は分かるものばかりではないと私は思っています。簡単に説明できるものなら説明だけで良いのかもしれません。決まった答えも正しい理解も存在しません。作品と対面したら自分の心と話をしてみて下さい。その体験の繰り返しによってあなただけの作品の見方がだんだんと出来上がっていくのではないでしょうか?

(text・photo/澤田知子)

澤田 知子
フォトアーティスト、成安造形大学2000年卒。
現在、文化庁在外研修員としてニューヨーク在住。
第29回木村伊兵衛賞受賞。
セルフポートレートの手法で「内面と外見の関係」をテーマに作品を制作し、国内外で発表している。

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